オープンしてすぐのころ、僕らにとって看板は一番の働き者だった。
そのころは知り合いしか予約もなかったし、僕はお店が家だった。
お金がないから家を賃貸できなかったのだ。
そして誰も知らない路地裏の二階。
看板がなければ誰も入れなかった。
でもお客様は徐々に増えていった。
それは
「看板が目についたから」「看板がかわいかったから」
というお客様がほとんどを占めていた状況を思えばわかる。
僕らはあの看板が恵んでくれたお客様を大切にしてきただけ。
不安な階段を昇る頭の中にはあの看板から思い描いたピッツァと生パスタがあったのだと思う。
その妄想に近い理想に近づいたから今があると思う。
あの看板は僕の仲間が作ってくれた。
デザイナーという仕事の傍ら、お昼ご飯を食べる時間に打ち合わせをしてくれたり、休みにずっと作業してくれたり、
いやな顔一つせず、楽しそうに幸せそうに作業してくれたのが本当に心に残っている。
愛されるお店になりたかった。
一人にだけでもいいから。
この店に来たいって思ってほしかった。
その入り口があの看板になってくれた。
僕はその看板を作ってくれた仲間に感謝する、毎日看板を出すとき。
そしてずっとその感謝を続けていきたいと思う。
一生をかけてその恩返しをしたいと思う。
ありがとう。