今日の最後のお客様は同業のご夫婦。
田上君の最後ということで来てくれていた。
彼らは今までの集大成のパスタを作ってほしいと田上君にお願いした。
彼が作ったのはもっともシンプルなパスタ ポモドーロフレスコ。
一番腕が表面化するものでもある。
美味しいと言われた。
愛があると・・・。
それほど嬉しいほめ言葉と送別の言葉はないだろう。
そして僕らは久々に田上君の作る賄いを食べた。
最近は谷本君のだったから。
枝豆とシラスの入ったパスタだった。
食べた瞬間、ぐっときた。
すごくおいしかった。
お客様の隣で食べていたのだが。・・・・
つい、常連さんに
「いやーうまいですわ。あいつのパスタ。成長がこれほどわかるなんてね・・・」
と言ってしまった。
そしてその会話を知らない中田君がすぐさま田上君に言った
「うまいわ。美味しいよ」
田上君は泣いてた。
僕らは意外にほめない。
ここまで言うことは今までなかった。
美味しいと心から何も考えずに言えたのは
あのひと皿。
最後に美味しいものを食べさせてくれた。
嬉しかった。
僕は彼の気持ちとその努力とハートに
感動し、流しそうになった涙をぐっとこらえた。
まだそのタイミングではない。
美味しいかった。
田上君、美味しかったよ